免疫とワクチン ーなぜワクチンは効くのー

ワクチンを打つと、私たちの体の中ではどんな変化が起きるのでしょう?なぜワクチンが効くのか、なぜワクチンが必要なのでしょうか。

免疫とは?

私たちの体には、細菌やウイルスなどの病原体の感染から守る仕組み「免疫」が備わっています。免疫は白血球の役割です。病原体が体内に侵入すると、白血球が協力、連携して体を守ります。

免疫には、生まれつきもっている「自然免疫」と白血球の記憶力をもとにした「獲得免疫」の2種類があります。

どうやって、病原体を攻撃するの?

病原体が体に入ると、まず自然免疫が病原体をすばやく攻撃します。獲得免疫は、病原体の情報を憶えておき、再びその病原体が体に入ってきた時に備えます。獲得免疫のおかげで、同じ感染症に2回目以降にかかったときは、初めてかかったときよりも軽い症状で済むことがほとんどです

 

じゃ、一回かかれば良いんじゃないの?

ワクチンで防げる感染症(VPD)に「麻しん」があります。麻しんにかかって治ると「一生、麻しんにかからない」と言われます。それは、獲得免疫が麻しんの病原体(麻しんウイルス)を憶えてくれるからです。このように、感染症にかかるとその病原体ごとに免疫の力がつき、感染しにくくなったり、感染しても重症化しにくくなったりします

でも、これにも問題があります。

江戸時代、麻しんは「命定めの病気」と言われました。ワクチンがないために麻しんの予防は難しく、治療法もないために多くの子どもや大人が麻しんで亡くなりました。つまり、病気になることで免疫の力をつけるためには、辛い症状に耐え、幸運にも命が救われる必要があることを覚えておかなければなりません。現在ワクチンがある病気の多くは、確実な治療法がなく、深刻な合併症や後遺症を残したり、命を落としたりする危険がある重大な病気なのです。

ワクチンのメリットってなに?

ワクチンは、初めて感染した時と同じような仕組みで、その病原体に対する免疫の力をつけてくれますしかも、ワクチンでは実際の感染のようにその病気を発症することはありません。ワクチンには、症状が出ないように病原性を弱めたもの(生ワクチン)や病原性をなくしたり病原体の一部を使ったもの(不活化ワクチン)があります。生ワクチンでは、まれに症状が出ることがありますが、実際に感染症にかかった場合と比べればとても軽い症状で済みます。不活化ワクチンでは、接種後に感染症の症状が出ることはありません。他の人へうつすことがない点も、ワクチンの利点です

なぜ、予防接種が必要なの?

予防接種は、ワクチンを投与することで体内に病原体に対する免疫を作る医療行為です。予防接種の目的として、次の3つをあげることができます。

  1. 自分がかからないために
  2. もしかかっても症状が軽くてすむために
  3. まわりの人にうつさないために

1.と2.はワクチン接種を受ける本人のための目的です。ワクチンが「個人防衛」と呼ばれる理由です。3.はワクチンの「社会防衛」と呼ばれる一面で、自分のまわりの大切な人たちを守ることです。

自分がワクチンを受けずにVPDにかかってしまい、家族や同僚、お友だちなどにうつしたらどうなるでしょう。その先には、高齢の方や妊婦さん、基礎疾患がある方がいらっしゃるかもしれません。接種できる人たちがきちんとワクチンを受けることで、地域社会でその感染症の流行を抑えることができます。言いかえれば、私たちの子や孫、医療が必要な病気の人の命を守ることにもつながります。

情報をもとに必要なワクチンを受けましょう。

思春期・青年期(10~20代頃)

子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)感染症や肝臓がんの原因となるB型肝炎は性交渉などで感染します。髄膜炎菌感染症はあまり知られていませんが、乳幼児と10代後半に多く、急激に悪化して死亡や後遺症のリスクがあります。また多くの感染症は、妊娠中に感染するとさらに重症化したり、流産や早産、先天性障害の子どもが生まれたりします。将来のために妊娠出産する前の年代で必要なワクチンを接種しておきましょう。

子育て世代

大人がかかると重症化する感染症は、妊婦さんがかかるとさらに重症化します。妊娠中の麻しんは、妊婦自身の死亡や流産・早産のリスクが高まります。妊娠初期の風しんは、おなかの赤ちゃんに先天性風疹症候群(CRS)のリスクを高めます。MR(麻しん風しん)ワクチンは妊娠中には受けられませんので、妊娠前にパートナーとともに接種しておきましょう。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ、百日せきなどは、妊娠中にワクチンを接種すると、移行抗体で妊婦本人だけでなく赤ちゃんの感染を予防する効果があります。妊娠中は積極的に、ワクチンを接種しましょう。

 現役ミドル世代(50~60代頃)

免疫は、年齢とともに低下し始めます。インフルエンザや帯状疱疹の神経痛が長引くとは仕事や日常生活に支障をきたすこともありますので、ワクチン接種をおすすめします。また、妊娠出産の年代の女性がいる家庭や職場などでは、性別、未既婚に関わらず、子どもも大人もMRワクチンの接種で麻しんや風しんの予防を心がけましょう。

 シニア世代(65歳~)

高齢者は、命や健康、QOLにかかわる感染症の予防が必要です。高齢者のインフルエンザは重症化や肺炎球菌感染症(肺炎)などを併発しやすくなります。インフルエンザと高齢者の肺炎球菌ワクチンを受けましょう。また加齢とともに体力や免疫力が低下します。
百日せきのせきや、帯状疱疹後の神経痛はつらい症状が長く続くので、ワクチンでの予防をおすすめします。

 

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作成:Health Amulet編集部・NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会